気温や日射量、積雪深等の流域内での分布を、ひな形で明示的に扱うことのできる分布型融雪流出モデルを開発しました。
分布型モデルは、流域要素(地形・土地利用など)をメッシュで表現して、メッシュ単位で計算を行うモデルである。既存の分布型モデルは、大別すると(1)短期計算(高水計算)、(2)長期計算(水循環計算)の2種類のモデルがあり、(1)は洪水流出解析、(2)は気候変動による水循環の変化・水質汚染物質の移動などの解析に用いられている。分布型モデルによる解析が進歩している背景には、入力条件である面的降雨予測(レーダ雨量など)の精度向上やリモートセンシング技術の進歩により面的な情報が入手可能となっていることが背景にある。分布型モデルを用いれば、メッシュ単位で水や土砂の移動量が時間ごとに計算できる。また、メッシュ別に地下水移動も把握できるので、土壌水分変化による斜面崩壊の考え方を取り込み斜面崩壊予測モデルと組み合わせることで、分布型モデルをレベルアップすることも可能であろう。砂防ではこれまで集中型による計算がなされてきたが、流域内での傾斜等の地形、土質特性等の地質、裸地植生等の被覆状況、移動可能な土砂量、融雪状況の分布などの差異を考慮した流出解析や、土地利用の変化による影響を検討する場合に、分布型モデルを用いた流出計算が効果的である。また、今後レーダ予測雨量の技術が進んでいくことは明らかであり、これらと分布型モデルを用いて計画流量ハイドロの設定が進むことも期待できる。
ここでは、日本で屈指の豪雪地帯である芋川流域は地震で荒廃しており、融雪に伴う土砂災害の発生が懸念さている。このため、標高や斜面方位の影響が大きい融雪現象に対して分布型モデルを適用し、簡易的な気象観測データによる融雪流出現象の再現性の検証を行った。
対象とした流域は、信濃川水系魚野川の右支川(信濃川合流点より7.2km付近)の芋川流域とした。(図-1)流域面積は、38.4km2の山地河川である。芋川流域内において、寺野・東竹沢(湯沢砂防事務所)・小松倉(土木研究所)において気象観測を行った。また小芋大橋地点(流域面積:34.9km2)で水位観測(新潟県)を行い、H-Q式により流量換算を行った。
3.1 地形モデル
3次地域区画メッシュ(約1km:25,000地形図を縦横各10等分)を20等分し、芋川流域内を50mメッシュに分割した。標高は中越地震発生後(平成17年5月11日)に測量したLPデータを使用した。また、標高データより、図-2に示す斜面傾斜角・斜面方位角を作成した。国土数値情報(KS-202)より土地利用を作成し、河道網として、50mメッシュごとの流出集中経路を表す擬河道網データを作成した。
3.2 融雪計算モデル
短波放射・長波放射・顕熱・潜熱・降雨による搬送熱の5要素による熱収支から融雪水量を算出するモデルを作成した。
図-3 : 融雪計算モデルにおける計算の流れ
3.3 流下計算モデル
流下計算には、陸ら1)が魚野川流域で適用実績がある流出モデルを適用した。図-4に示すように雨量にarを乗じて、さらに直接流出および基底流出成分の配分率asを用いて分離を行った。直接流出成分は擬河道網を用いて流域の出口までkinematic-wave法で計算し、基底流出成分については貯留関数法で計算を行い流出高に変換した。両者の合計を流出量とした。図-5は位数と集水面積の関係を示したものである。位数は、小芋大橋地点に流下する擬河道網の順位付けをストレーラ方式により行った。これより、位数とともに集水面積も大きくなることがわかる。主河道は、その上流域の集水面積が大きいことが条件として考えられるが、その設定方法が確立されていないため、感度分析、再現計算を通じて検討した結果、位数6の河道を主河道として設定するものとした。
<参考文献>
1) 陸ら:分布型水文情報に対応する流出モデルの開発、土木学会論文集、第411号/II-12、pp.135-142、1989