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東京建設コンサルタント

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東日本大震災被災への対応~大槌町の復興の取組と現在

2011年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震では、津波により岩手・宮城・福島県の太平洋沿岸部を中心に未曾有の被害を受けました。 当社は、岩手県大槌町の震災復興に携わり、総合力を結集して取り組んできました。

大槌町の位置

1.大槌町の被災状況

大槌町は岩手県南部、釜石市の北側に位置し、被災前の人口は約16,000人、南に大槌湾、北に船越湾を擁する漁業を中心とした町です。 大槌川と小鎚川に挟まれた町方地区が町の中心で、沿岸部には特徴ある6つの地区があります。

地震直後に発生した津波により沿岸部の6地区は壊滅的な被害を受け、死者・行方不明者あわせて約1,300人が犠牲となり、約4,300世帯の住宅が損壊しました。

被災後の町方地区
(城山から旧町役場方面を望む)
被害が大きかった沿岸6地区

2.復興基本計画及び整備計画の策定

当社は、大槌町の被災状況を踏まえた復興基本計画を作成し、それに基づく整備計画を策定しました。 2011年9月に災害復興基本条例が制定され、それを受けて10月~12月の3ヶ月間で、住民が自由に参加できる地域復興協議会を10地区で計 38回開催しました。地域復興協議会では、建物の被災状況や津波シミュレーションを住民に提示し、防潮堤の高さや復興する市街地の配置と高さなど が協議されました。コンセプトは、『海の見える、散歩したくなるこだわりのある美しいまちづくり』としました。

地域復興協議会の様子

3.復興基本計画の実現に向けて~まちのデザイン

2012年から復興事業の計画が本格的にスタートしました。 復興事業を具体的に進めるとともに、地区のグランドデザインと空間デザインを検討する場として大槌デザイン会議及び地区別ワーキンググループ会議 を設置し、住民との意見交換を通じて検討を重ねました。全体会議と7地区の個別ワーキングを計73回開催し、その成果をデザインノートとしてとり まとめ、地区内で行われる各種事業に反映しました。

事業規模が最も大きい町方土地区画整理事業地区では、道路や公園など主要な公共施設の基本設計段階でワークショップを開催し、デザインノートの考え方や住民の意見を反映し たまちづくりが進められました。

ワークショップの様子
完成後のイメージが住民に伝わるように
模型やスケッチを作成
デザインノート1
デザインノート2

4.まちびらき、そして真の復興に向けて

2013年頃からは、デザインノートにとりまとめられたまちづくりの考え方を反映した復興事業が展開されてきました。町方地区では、『町方の風土と暮らしの記憶を未来につ なぐ』をコンセプトに、嵩上げによる市街地の再整備を進める町方地区において被災前に多く存在していた自噴井を残す形で 御社地公園を再整備しました。なお、御社地公園整備の取組は2020年度のグッドデザイン賞を受賞しました。

★グッドデザイン賞2020「御社地公園」」のページ★

デザインノート抜粋
御社地公園

赤浜地区では、『美しい海・ひょうたん島を眺めて暮らすまちづくり』をコンセプトにまちづくりを展開し、ひょうたん島が望める見える高台に新しい市街地を整備しました。

デザインノート抜粋
赤浜地区・中心の広場付近からのひょうたん島の眺め

吉里吉里地区では、地区のコミュニティの核となる場所をつくるために、公民館と中心の広場を並べて配置しました。広場は、祭りの会場にも利用され るなど、まちの賑わいを取り戻す場所となりました。

デザインノート抜粋
吉里吉里地区・みんなが集まるまちの広場

また、防災集団移転促進事業により跡地となった須賀町地区の跡地利用計画(郷土材利活用計画)、身元不明遺体の焼骨を収蔵するための納骨堂の整備 や、震災後に再整備することとなった小中一貫校・大槌学園の造成計画など、当社は様々な復興まちづくりを支援してきました。郷土材利活用計画で は、移転跡地には被災前に各家庭が生活用水として利用していた自噴井がエリア全域で湧出しており、この自噴井を生かした「大槌町郷土材活用エリ ア」を位置付けて湧水、イトヨ、ミズアオイといった大槌町の郷土財を保全・活用するための計画を専門家の先生方と協力して策定しました。

郷土材利用計画(抜粋)
自噴井を活かし豊かな自然が再生された現在の様子
納骨堂
大槌学園

防災集団移転促進事業や土地区画整理事業をはじめとする各種復興事業によるハード整備は完了しました。今後は、産業振興、観光振興 などに取り組み、大槌町が真の復興を実現することを期待しています。