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近年、地震、豪雨、大型台風など自然災害が多く発生し、各地で甚大な被害をもたらしました。地球環境が著しく変化し、さまざまな災害が地球規模で発生しています。
当社は、地球環境問題や防災に関わる様々な問題に対応することを重要な事業方針の一つとしてきました。その一環として、平成30年6月に「かすかべ環境防災研究センター」を開設しました。当センターは、屋外実験場と屋内実験棟を構え、水理模型実験、環境と防災に関する実験と研究、センサーと観測機器の開発と検定等を行っています。
[ かすかべ環境防災研究センターパンフレット(主要業務実績) ]
かすかべ環境防災研究センター
当社は、茨城県つくば市に約7千㎡の「つくば実験センター」を確保し、水理模型実験業務に対応してきました。しかしながら、水理模型実験に加え、環境と防災に関する様々な実験と研究、センサーと観測機器の開発と検定などに取り組むため拡充する必要があり、「つくば実験センター」の3倍弱の約2万㎡の土地を取得し、「かすかべ環境防災研究センター」を開設しました。
当センターは、敷地の半分を屋外実験場として利用し、屋内実験棟も整備しました。これらの実験に必要な高架水槽・低水槽・帰還水路などの諸設備を整え、実験施設を見渡せる位置に管理棟を設けています。
以下、主要な施設を紹介します。
<諸元>
全体敷地:19,133㎡
管理棟:260㎡(延床面積)
屋外実験場:9,500㎡
屋内実験棟:788㎡(延床面積)
屋内実験施設:440㎡
実験設備:低水槽、高架水槽、揚水ポンプ、給水管、帰還水路 など
補助設備:天井クレーン、木工室、計測機器倉庫 など
地域貢献施設:自由広場1,261㎡、緑地・遊歩道1,175㎡
全体平面図
■屋外実験場
屋外実験場は、約10mの高低差と約400 L/sの給水能力を2系統備えており、主に実河川の縮尺模型における水理実験や、堰や越流堤の大型の抽出模型実験、堤防強化対策のための堤防崩壊実験などを行っています。これらの水理実験から得られた様々な知見を元に解決策を模索しながら、その有効性や有益性を総合的に評価し、実際の河川改修事業に役立てます。
縮尺模型における水理実験では、様々な問題を抱える現地の状況やそれに対応する治水施設(放水路、遊水地、取水施設等)を縮尺模型でそのまま表現します。模型に実際に水や土砂を流すことで、そこで生じる複雑な現象を観察し、水位や流速、地形変化等を測定するとともに、洪水氾濫に対する安全性や治水施設の有効性などを検証します。
大型の抽出模型実験では、可能な限り現地に近いスケールで堰や越流堤などの水理構造物の模型を製作し、水理実験により越流特性や流下能力を検証、評価します。堤防崩壊実験では、大流量通水が可能な常設の大型実験水路上に実スケールの堤防を再現し、堤防強化対策工法を施した場合の崩壊過程を観察し、対策工法の効果や課題の抽出を行っています。
水理模型実験は、実河川や水理構造物周りで起きる現象を直接目で見て理解することができます。河川事業に対する合意形成や理解の促進のため、当センターに現地周辺の住民や行政関係者などを招き、模型実験見学会を開催しています。また、当社若手技術者の教育・研修の場としても活用しています。
屋外実験場
大型直線水路
社員研修での水理実験見学
■屋内実験棟
屋内実験棟には、気温や風等の大気状態の影響を受けてはいけない模型実験を行うための屋内実験施設を整備しています。また、実験模型の製作や改造を迅速に行うための木工室や、計測機器や実験資材を格納する倉庫を備えています。
屋内実験施設では、可搬式の約80L/sの能力の給水ポンプを3台常備し、河川構造物等の管路実験、大縮尺模型実験、常設の直線水路を用いた基礎的な実験などを行っています。
屋外実験場よりも実験環境を一定に保つことができるため、透明アクリルなどで製作した模型を用いて河川構造物周りの3次元的で複雑な水流を観察したり、微細高精度な計測機器を用いて河川構造物にかかる力を計測したりすることができます。これらの実験結果は、河川構造物の詳細設計に役立てられています。
また、土砂の投入も可能な可変勾配式の直線水路を常設しており、基礎的な水理実験を行っています。これまでに浸食実験や洗堀実験、堤防法面保護ブロックの安定性確認実験、センサーと観測機器の開発や性能評価に関する試験を行っています。
屋内実験棟外観
屋内実験施設
可変勾配式直線水路
屋内実験施設での実験の様子
■管理棟
センター全体の管理と執務を行う建物です。実験を見学に来られた発注者・学識経験者・地元住民の方々への説明や意見交換のための会議室を備えており、地域の方々への防災学習・教育のレクチャールームとしても活用しています。
管理棟外観
会議室
旧沼端小学校校舎
当センターは、平成15年に廃校となった旧沼端小学校跡地に建設されました。春日部市が平成28年4月1日に実施した「旧沼端小学校跡地活用事業者提案競技」にて、当社は環境防災研究センター事業を提案し、複数の事業者の中から選定されました。
当センターにおける様々な水理模型実験を通して、安全で豊かなうるおいのある川づくりを実現していくとともに、学びの場であった小学校の跡地であることを生かして、小中学校や地域の方々の防災学習・教育を支援し、地域防災力の向上に取り組んでゆきます。
■遊歩道・自由広場
施設外周の緑地内に遊歩道、自由広場および駐車場を整備しています。緑地内の樹木には、小学校跡地の既存樹木を活用しています。遊歩道、自由広場、駐車場を一般開放しており、散策コースや休憩場所としてご利用いただけます。
遊歩道
自由広場
■雨水貯留施設等
自由広場と屋外実験場は、雨水貯留施設として、最大2,040㎥(25mプール約8杯分)の雨水を貯留することができ、施設周辺の浸水対策に寄与します。また、屋外ポンプ施設に約900㎥の水を貯留しており、火災等の際には消防用水として利用できます。
■防災学習・教育、施設見学会
「春日部市の水害の特徴」や「洪水避難の方法」などの講座を開き、市民の防災学習・教育に貢献します。また実物の水理模型実験の見学会も行っています。
施設見学の様子
防災学習の様子