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技術トピックス

平成20年度ダム工学会技術開発賞を受賞

平成21年5月14日に開催されたダム工学会第19回通常総会にて、「ダム工学会技術賞」と併せ、ダム技術の発展に著しい貢献をしたということで、当社社員がダム工学会技術開発賞を受賞し、表彰されました。

発表論文では、矢作ダムにおける濁水放流の長期化等への対策として実施した浮沈式濁水対策フェンスについて、設置にいたった経過と設備について報告しています。

発表論文:「矢作ダム浮沈式濁水対策フェンスの操作方法と構造」
岡本幸久:東京本社 水環境部部長

賞状
楯

論文の概要

1. 概要
矢作ダムにおいては、平成12年9月の東海豪雨により流域が荒廃し、濁質の供給量が多くなったため、濁水の長期化が顕著となり、濁水対策の実施が急務となった。また、アユ遡上期におけるダムからの冷水放流についても問題となっていた。そのため、濁水の長期化と冷水放流の軽減を目的に、即効性が高く、コストのかからない対策として、浮沈式濁水防止フェンスの設置と選択取水設備の運用の見直しを計画した。

2. 濁水対策フェンスの諸元

■フェンス設置位置と丈長の決定
フェンスの設置位置は、揚水発電取水放水口が2.5kmにあり流れが乱されること、貯水位変動や貯水池の形状(くびれ)から機能の確保と施工性を考慮して2Km地点とし、フェンス丈長は、清水の確保の視点から15m とした。
確保できる清水容量は、約1000万m3であり、出水後の平均的な放流量約50m3/sに対して2~3日分に相当する量しかない。そのため、出水後清水を速やかにフェンス~ダム堤体間に補給するためにフェンスの一部を浮沈式とし、清水化した流入水をフェンスとダム提体間に補給することとした。
夏期流入水の侵入位置は概ね水深5m以浅であることから、フェンスの沈降深さは水深5m、沈降箇所は幅80mとした。

図1 フェンス設置位置


図1 フェンス設置位置

■フェンスの選択取水設備の運用と機能
濁水防止フェンスは選択取水設備と連動して運用することにより効果が得られる。そのため出水に伴う濁水発生のタイミングに合わせて図2のように運用することにより濁水放流の長期化を軽減可能と考えられる。

図2 濁水防止フェンスの運用方法と濁水のイメージ


図2 濁水防止フェンスの運用方法と濁水のイメージ

3.フェンス及び選択取水設備の運用による冷濁水現象の軽減効果の予測
冷濁水シミュレーションモデルを用いて、効果の予測を行い、実績運用と固定式フェンスを設置した場合、浮沈式フェンスを設置し運用した場合の比較を行った。



(1)濁水長期化の低減効果
■濁度超過日数の比較
放流濁度25度以上の日数を、平成11~16年を合計値でみると実績運用では210日である。 これに対し、対策を行うことにより、
・固定式フェンス → 17日低減
・浮沈式フェンス → 24日低減

濁水長期化日数

※図中の数値は濁水長期化日数(濁度25度以上)を示し、 平成11年~16年の出水毎の合計値である。

(2)冷水放流の影響
■放流水温の非超過日数
アユの遡上期(4月21日~6月31)の平成11~16年の6ヵ年の平均の日数で比較。
いずれのケースも、放流水温が13℃以下となることはほとんどない。

■放流水温15℃未満の日数を実績運用36日と比較すると
・固定式フェンス→10日増加
・浮沈式フェンス→3日増加

■放流水温17℃未満の日数を実績運用47日と比較すると
・固定式フェンス→7日増加
・浮沈式フェンス→3日増加

放流水温の非超過日数

放流水温の非超過日数

以上より、冷水放流は実績運用に対してやや改善され、濁水長期化の低減には十分な効果が得られると考えられる。

4.濁水対策フェンスの設置状況
フェンスの構造は上部フロート体部分に強化合成ゴムを使用し、陸上部のコンプレッサから空気を送ることによって浮上・沈下させるものである。フェンス浮上時の全景、浮沈部分は下の写真のとおりであり、5mごとに補助フロートを取り付けている。また、浮沈部分に使用している強化ゴム体は、ゴム堰でも使用されている非常に強度の高いものを使用している。

濁水対策フェンスの設置状況

5.フェンス設置後の冷濁水現象の軽減効果
フェンス設置後の平成16年8月31日出水前後の状況を図  、  に示す。出水直後は、フェンスによる濁水の遮断、清水の確保がなされている。7日目は、フェンスを沈降させたことにより、表層に清水が供給されていることが確認できる。

図3 平成16年8月31日出水前後の濁度の鉛直分布


図3 平成16年8月31日出水前後の濁度の鉛直分布

濁水と清水が分離されている状況が水色の違いで明瞭に分かる。

図4 濁水防止フェンス上下流の状況(平成16年9月3日)


図4 濁水防止フェンス上下流の状況(平成16年9月3日)

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