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静岡県のグランシップ静岡で開催された、日本生態学会第60回大会の多摩川河川敷における植生研究を題材とした自由集会(2013年3月5日)で、日本の植生研究の第一人者である埼玉大学の佐々木先生、東京農工大学の吉川先生、本社事業本部 地域環境本部の大和が講演しました。
植物社会学は種組成を基に植生を類型区分して種組成や構造の特性、地理的分布、成立環境等を明らかにし、体系化していく学問である。本自由集会では、多摩川河川敷における植生研究を題材とし、河川敷における植物社会学研究の意義と課題、河辺植生の今後等について議論した。
司会
中村幸人(東京農業大学教授)
コメンテータ
若松伸彦(横浜国立大学研究員)
村上雄秀((財)国際生態学センター上席研究員)
【講演】
2005~2006年に植物社会学的植生調査を行い多摩川河川敷に成立する植物群落を明らかにすると共に、植生図を作成した。また、植生の経年変化から多摩川河川敷の30年間の環境変化を読み取るため、過去に作成された植生図(1979年、1995年発表)との比較を行った。
多摩川河川敷において、12クラス75群落の植生単位が確認された(スライド5~10)。それらを凡例とした植生図の経年比較により、以下の植生変化が確認された(スライド11~15)。
Bの植生変化は、下水道整備等による水質の改善によるものと考えられた(スライド20~21)。
Cの植生変化は、砂利採取の禁止や一次産業の低迷による畑地の減少によるものと考えられた(スライド22)。
これらの内、Aの治水・利水による河川流量の減少、水位の低下や流路の固定化、複断面化といった地形の変化が、砂礫川原や湿地の河川敷に本来成立する植物群落の減少に影響しており、多摩川河川敷における30年間の植物群落の多様性低下に影響を与えていると考えられた(スライド23)。