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技術トピックス

令和3年度 土木学会賞 論文賞 受賞

【論文名】曽木の滝分水路における継続的なデザイン
     土木学会論文集D1(景観・デザイン)、Vol.76,No.1,pp.138-153,2020.
【著者名】星野 裕司 准教授(熊本大学)、小林 一郎 特任教授(熊本大学)、
      伊東 和彦((株)東京建設コンサルタント九州支社)

令和3年度土木学会論文賞 受賞一覧のページ
土木学会論文賞とは(土木学会表彰規定 第7条より)

土木学会デザイン賞賞状

曽木の滝分水路における、災害復旧事業への新たな取り組み

 受賞論文は、平成18年7月に鹿児島県川内川流域を襲った災害に対する、激甚災害対策特別緊急事業(以降、激特事業 ※災害復旧事業の一種)の一環で整備した曽木の滝分水路を対象にしたものです。
 鹿児島県伊佐市大口曽木に位置する曽木の滝は、「東洋のナイアガラ」と呼ばれる景勝地となっており、年間30万人の観光客が訪れる伊佐市を代表する観光地です。しかし、曽木の滝周辺は治水面からみると、流下能力が低い箇所となっており、平成18年7月の洪水時には曽木の滝よりも上流の広い範囲で浸水被害が発生しました。そのため、これまで前例がほとんどない「災害復旧事業における治水と景観の両立」を目的に、曽木の滝の景観を保全しつつ、激特事業により滝の真横を開削して、洪水の時のみ水が流れる分水路を整備することになりました。

 受賞論文では①事業期間が限られた激特事業に景観的視点を導入できた背景、検討プロセス、及びその成果、②激特事業後の利活用状況や良好な景観・環境の保全・創出に留意した追加整備(河川整備計画に対応した分水路吞口部の切り下げ)の全容など、災害復旧事業の計画段階から事業完了後の現在に至るまで継続的に行われてきた景観・環境・利用に配慮した画期的取り組みについて詳述しています。
 
 当社は、曽木の滝分水路の激特事業から追加整備に至る河道計画・景観検討・施設設計を一体的かつ継続的に担当しました。具体的には、治水と景観・環境・利用の両立を目指した整備案の立案や学識経験者からのアドバイスの具現化に向けた技術的検討等を行いました。論文賞選考委員会からは、「画期的事業に関する資料的価値が高いのみならず、今後の災害復旧事業のあり方と景観デザインの可能性を拡張する成果であり、論文賞に相応しい」という評価を頂きました。

 なお、「川内川曽木の滝分水路」は、過去に2012年度グッドデザイン賞でサスティナブルデザイン賞を、土木学会デザイン賞2013で優秀賞を受賞しています。

(土木学会デザイン賞2013受賞時の当社webサイト)
(2012年度グッドデザイン賞受賞時の当社webサイト)

良好な景観や多様な環境が創出されている激特事業で整備した分水路内(令和3年7月撮影)

良好な景観や多様な環境が創出されている激特事業で整備した分水路内(令和3年7月撮影)

分派量の規制機能を有した横断道路があったかつての吞口部(平成27年3月撮影)

分派量の規制機能を有した横断道路があったかつての吞口部(平成27年3月撮影)

分水路内の景観・環境と同化した追加整備(切り下げ)後の吞口部(令和3年7月撮影)

分水路内の景観・環境と同化した追加整備(切り下げ)後の吞口部(令和3年7月撮影)